ゅうりん》して、まるで冗談のように、クルリクルリと揺れて、一つところにかろうじて漂い得ていた。
 船長は、亀《かめ》の子のように首を縮めていた。そして、質においても量においても、小倉と三上との二人分よりも沢山着込んでいるのに、寒さにふるえていた。そして、三上の一言に、まだその顔をほてらせながら、ギクギクしていた。そして今日の潮の長さを、しきりに癪《しゃく》にさわっていた。
 彼にとっては、三上が一秒間でも彼を侮辱したことは、三上の生涯を通じて所罰さるべきであり、そのそばに黙って櫓《ろ》を押していた小倉も、その侮辱を聞いたという廉《かど》によって、同罪であるべきであった。そして、彼は、横浜|碇泊《ていはく》中には、やつらが「何であるか」を思い知らせてやらねばならないと決心した。
 「それにしても身のほどを知らない、ゴロツキだ。一体このごろの労働者は生意気だったり、小癪《こしゃく》だったり、そうでなければ、仕方のないナラズ者のゴロツキだ。従順な性格を持ったやつは一人もありゃしない。やつらを一人ずつ所罰するのは手間でたまらないことだ。労働者が、これほど生意気になるのは、法律があまり甘やかしす
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