然に壊滅しちまうからね」藤原はなだめた。
 「で、コーターマスターの方はどうだろう。まだ、話してもらえなかったかしら」藤原は、小倉にきいた。
 「まだ、話さないんだよ。どこから切り出していいんだか、話が、すっかり、打《ぶ》ちまけられないので困っちゃったんだよ。だからね、要求書を出す間ぎわになって、それを見せて意見を聞いたら。そしてもし、コーターマスターとしての、提出要求でもあるということなら、それを追加して、提出するということにしたら」小倉は答えた。
 「そうだね。その方がいいだろうね」藤原は賛成した。「その方が、秘密を保つ上にも、かえっていいだろうよ」波田も賛成であった。
 「じゃあ、僕は、西沢君を連れて来よう。そして決めちまわなきゃ、明日《あす》のことになるのじゃないかい」波田は、何だか追っ立てられるように、心が急がしいのであった。
 「ちょっと」と小倉は手で制した。「僕は、もう十五分で非番だから、非番になったら、ともの倉庫で寄り合ったらどうだろう」時計は、八時前十五分[#「八時前十五分」は底本では「八時十五分」と誤記]をさしていた。
 「そう、そうしよう。一人ずつ、チョッと上陸すると、いった格好をして、出ればいいからなあ」
 「じゃあ、そうしよう」そこで、二人《ふたり》のセーラーは下へ降りた。
 おもてへ帰った波田は、西沢に、八時の鐘がなったら、ともの倉庫で、相談があるから、わからないように抜けて来て、くれるようにといった。西沢はうなずいた。
 ストキは、ベンチへ聴衆の一人と、いったような顔つきで腰をおろして、例によって、煙草をふかし続けた。

     四一

 八時が鳴った。その時には、もう藤原はいなかった。波田は、ボーイ長のそばに、腰をおろして話していた。「じゃ、正月までの菓子を、食いためて来るからね。おみやげを忘れやしないから、待っていたまえよ、え、相変わらず、東洋軒さ、ハハハハハ」と、波田は、ともの倉庫を東洋軒にしてしまった。
 「え」西沢は頓狂《とんきょう》な声を出した。「波田君! 僕も、たまにゃ連れて行けよ」そこで、二人は、連れ立って、倉庫へやって来た。
 藤原は、目玉ランプを抱《かか》えて、綱敷き天神みたいに、ホーサーの、巻き重ねてある上にすわっていた。やがて小倉もやって来た。
 それで、一切は動員された――というわけであった。
 「そこで、僕
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