にガン張つてゐた。
そのうちに、同志のSやIなどが、「あつさりやめた。心配するな。帰つたらゆつくり話す」といふ、簡単極まるハガキを、私の旅先きに寄越した。Sは、私たちのグループの中で、文学的にもであるが、生活的に、全身的に、階級闘争に、もつともピッタリくつついてゐる男である。Iも、文学的に野心が多く、闘争の中にすつかりはまり込んだ、といつた風な男である。
*
私は、文学の上では、兎も角、運動の上では、他の人たちを捨てても、Sたちと行動を共にしなければならないと思つた。
で、私は、田舎から慌てて帰つて来た。
そして、別れなくていゝものなら、別れないやうにしようと、いろいろ、骨を折つて見た。
が、後で、いろいろ、理論めいて、えらさうな事はいへようが、そんな名目論や、ゴマ化しで無いものが、底の方に流れてゐる、といふ事が、二三日して、ぼんやり私にも分つて来た。
空家に籠つてこの一念(中)
Sや、Nを、文学的ルンペンなどと、たつた一ヶ月前まで位、一緒にやつて来た者で、ぬけ/\といふ奴もあるが、そんなのは、いつでも、私が、面の皮をヒン剥いてやる。ペンや、口でなら、
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