かん聞かず顔せば時鳥《ほととぎす》 宗長《そうちょう》
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などあり。なほ俳諧時代に入りても元禄より以前に
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ふぐ干や枯《かれ》なん葱《ねぎ》の恨み顔 子英
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といふあり。こは天和《てんな》三年刊行の『虚栗《みなしぐり》』に出でたる句なり。そのほか元禄にも何々顔の句少からず。
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寺に寐て誠《まこと》顔なる月見かな 芭蕉《ばしょう》
苗代《なわしろ》やうれし顔にも鳴く蛙 許六《きょりく》
蓮《はす》踏みて物知り顔の蛙かな 卜柳
雛《ひな》立て今日ぞ娘の亭主顔 硯角《けんかく》
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などその一例なり。因《ちなみ》にいふ。太祇《たいぎ》にも蕪村《ぶそん》にも几董《きとう》にも「訪はれ顔」といふ句あるは其角《きかく》の附句より思ひつきたるならん。[#地から2字上げ](三月二十四日)
羽後《うご》能代《のしろ》の雑誌『俳星』は第二巻第一号を出せり。為山《いざん》の表紙模様は蕗《ふき》の林に牛を追ふ意匠|斬新《ざんしん》にしてしかも模様
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