戸弘道館《みとこうどうかん》等の画にて二寸位の小き物なれど筆力|勁健《けいけん》にして凡ならざる所あり、而してその人を見れば目つぶらにして顔おそろしく服装は普通の書生の著《き》たるよりも遥《はる》かにきたなき者を著たり、この顔この衣にしてこの筆力ある所を思へばこの人は尋常の画家にあらずとまでは即座に判断し、その画はもらひ受けて新聞に載する事とせり。これ君の画が新聞にあらはれたる始なり。
 その頃新聞に骸骨《がいこつ》物語とかいふ続き物ありしがある時これに画を挿《はさ》まんとてその文の大意を書きこの文にはまるやうな画をかいてもらひたしと君に頼みやりしに君は直《ただち》にその画をかいて送りこしたり。この時の骸骨雨宿りの画は意匠の妙といひ筆力の壮といひ社中の同人を駭《おどろ》かしたる者なり。余がこれまでの経験によるに画工に向つて注文する所往々にしてその主意を誤られ、よし誤られざるも十ヶ条の注文の中僅かに三、四ヶ条の条件を充たさるるを以て満足せざるべからざる有様なりき。しかるに不折君に向つての注文は大主意だに説明し置けば些末《さまつ》の事は言はずとも痒《かゆ》き処に手の届くやうに出来るなり、否
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