萬葉集卷十六
正岡子規
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)插《はさ》めば
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)拾遺|抔《など》が
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(例)[#地から2字上げ]
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萬葉集は歌集の王なり。其歌の眞摯に且つ高古なるは其特色にして、到底古今集以下の無趣味無趣向なる歌と比すべくもあらず。萬葉中の平凡なる歌といへども之を他の歌集に插《はさ》めば自ら品格高くして光彩を發するを見る。しかも此集今に至りて千年、未だ曾て一人の之を崇尚する者あるを聞かず。眞淵の萬葉を推したるは卞和《べんくわ》の玉を獻じたるに比すべきも、彼猶此玉を以て極めて瑕瑾《かきん》多き者となしたるは、善く玉を知らざりしがためなり。眞淵は萬葉に善き歌と惡き歌とありといふ。歌に善きと惡きとあるは何の集か然らざらん。然るに特に萬葉に於てしかいふ者は萬葉には殊に惡歌多き事を認めたるに非るか。萬葉に於て殊に惡歌多しといふ裏面には古今、拾遺|抔《など》が比較的に善く精選せられたるを意味するに非るか。若し然らば眞淵は萬葉の惡歌を以て古今の惡歌
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