なり。此調萬葉以後に無し。
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吾妹子が額におふる雙六のことひの牛の鞍の上の瘡
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 此歌は理窟の合はぬ無茶苦茶な事をわざと詠めるなり。馬鹿げたれど馬鹿げ加減が面白し。
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寺々のめ餓鬼申さく大みわのを餓鬼たばりて其子産まさむ
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 これは大みわの朝臣といふ人が餓鬼の如く痩せたるを嘲りて戲れたる者にて、女の餓鬼が大みわの朝臣を夫に持ちて子を産みたいといふ。といへる、奇想天外なり。普通ならば「夫に持ちたい」といふばかりにて結ぶべきを更に一歩を進めて「其子うまさむ」といふ處作者の伎倆を見るに足る。ついでにいふ、前の歌の「雙六《すごろく》」此歌の「餓鬼」皆漢語なり。[#地から2字上げ]〔日本 明治32[#「32」は縦中横]・2・28[#「28」は縦中横] 二〕
[#底本ではここに「編注」あり。「寺々の」の歌の最後は普通「産まはむ」と訓む、という内容]

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此頃のわが戀力記し集め功に申さば五位の冠
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「功」「五位」皆漢語なり。戀に骨折る功勞をいはゞ五位ぐらゐの値打は
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