寢る夜落ちず家なる妹をかけてしぬびつ
[#ここで字下げ終わり]
「ときじみ」に説あり。
[#ここから4字下げ]
   額田王歌
秋の野のみ草刈り葺きやどれりし宇治の宮子の假庵しおもほゆ
[#ここで字下げ終わり]
「みやこ」といふ事に就きて兼ねて論あり。皇居のあるところを都といふはいふ迄もなけれど、此歌にては行在にても都といふが如し。鎌倉の都といひ得べきか否かに就きて、ある人、昔は國府を鄙の都といひし例もあれば鎌倉の如く江戸の如く覇府《はふ》ありし地は都といひてもよかるべし、といへり。
[#ここから4字下げ]
   額田王歌
熟田津《ニギタヅ》[#ルビの「ニギタヅ」に〈原〉の注記]に船乘《フナノリ》[#ルビの「フナノリ」に〈原〉の注記]せむと月待てば潮もかなひぬ今はこぎいでな
[#ここで字下げ終わり]
 伊豫の熟田津より西國に行幸ある時の歌なるべしと。「月待てば」は實際は潮を待つならん。「ふなのり」といふ語今は俗語に用ゐられて歌などに詠まれぬが如し。
 莫囂圓隣云々の歌讀方諸説あり。今省く。[#地から2字上げ]〔日本附録週報 明治33[#「33」は縦中横]・6・11[#「11」は縦中横]
前へ 次へ
全14ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング