普通になりぬ。さりとて文法を盡く破れとにはあらず、破りて却て面白き處には破れといふなり。文法學者に支配せらるゝ程の歌人は物の用にも立つまじき事論なし。
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反歌
玉きはる内の大野に馬なめて朝ふますらん其草深野
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其草深野の一句縁語の如くにて縁語にあらず。言葉を短くするには必要なる語法なり。「朝ふます」の如き語法も萬葉に多くありて後人却て知らず。[#地から2字上げ]〔日本附録週報 明治33[#「33」は縦中横]・5・21[#「21」は縦中横] 二〕
(三)
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幸讚岐國安益郡之時軍王見山作歌
霞立つ長き春日の、暮れにけるわづきも知らず、むら肝の心を痛み、ぬえ子鳥うら歎《ナゲ》[#ルビの「ナゲ」に〈原〉の注記]居れば、玉だすきかけのよろしく、遠つ神我大君の、いでましの山ごしの風の、獨り座《ヲ》[#ルビの「ヲ」に〈原〉の注記]る我衣手に、朝夕にかへらひぬれば、ますらをと思へる我も、草枕旅にしあれば、思ひやるたづきを知らに、網の浦のあまをとめらが、燒く鹽の思ひぞ燒くる、我が下心
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