れど「小松が下」の自然なるに如かず。併しここも惡きに非ず。以上三首皆面白し。
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   三山歌
かぐ山はうねびをゝしと、耳梨とあひあらそひき、神代よりかくなるらし、いにしへもしかなれこそ、うつせみも妻をあらそふらしき
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 天智御製なり。男山女山といふ事に就きて即ち初二句の解釋に就きて論ありたれどそは如何やうにもあるべし。戀の爭ひといはゞ俗にも聞ゆべきを、山の爭ひを比喩に引きしために氣高く聞ゆ。結末七言二句の代りに十言一句を置く、亦一法なり。「こそ」の係「らしき」の結なり。
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   反歌
かぐ山と耳梨山とあひし時立ちて見に來し伊奈美國原
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 出雲の阿菩《あぼ》の大神が三山の爭ひを諫めんために播磨の印南郡に到りしが爭ひやみたりと聞きて行かでやみきとなり。反歌には戀の意無し。
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わだつみの豐旗雲に入日さしこよひの月夜あきらけくこそ
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 此歌、題を逸す。雲が旗のやうに靡きたるを見て旗雲といふ熟語をこしらえ、それが大きいから豐といふ形容を添へて豐旗雲といふ熟語を
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