└ 其 他 雑 慾 十 斤┘
┌ 読 書 慾 七十斤┐
乙┤ 食 慾 十五斤├百斤
└ 其 他 雑 慾 十五斤┘
[#罫線の部分は、「{」「}」で括る]
(読書慾なども開析すれば名誉又は五官の慾に帰すべけれども姑く其方法によりて名くるのみ)
右甲乙二者に於て甲は世に所謂放蕩書生の類にして乙は即ち勉強家の類なり。其総分量は百斤なれば若し甲の色慾減じて五十斤とならば、其十斤だけの分量は修飾慾か又は雑慾の部に入りて其分量の総数を充たすべし。今乙者の雑慾中の色慾にして二十斤を加ふれば則ち読書慾は減じて五十斤となり、色慾増して五十斤とならば読書慾は二十斤となるべし。是等の例は世に屡々見る所にして、勉強家漸次に変じて放蕩家となるが如き此類なり。又甲者といへども読書慾全く無きにはあらず、読書して知識を得、而してそれによりて名誉を得、金銭を得んことを希望せざるもの少し。只々其慾心は内に萌芽を含むのみにて、現はれて実際の慾とならざるのみ。即ち六十斤の色慾あらば其外に六十斤の読書慾を現はさんとするも到底分量上に許さゞるなり。故に一慾起れば一慾消え、一情発
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