句合の月
正岡子規

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)句合《くあわせ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二度|吟《ぎん》じて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「走にょう+旱」、第4水準2−89−23]
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 句合《くあわせ》の題がまわって来た。先ず一番に月という題がある。凡そ四季の題で月というほど広い漠然とした題はない。花や雪の比でない。今夜は少し熱があるかして苦しいようだから、横に寝て句合の句を作ろうと思うて蒲団《ふとん》を被《かぶ》って験温器を脇に挟《はさ》みながら月の句を考えはじめた。何にしろ相手があるのだから責任が重いように思われて張合があった。判者が外の人であったら、初から、かぐや姫とつれだって月宮に昇るとか、あるいは人も家もなき深山の絶頂に突っ立って、乱れ髪を風に吹かせながら月を眺《なが》めて居たというような、凄《すご》い趣向を考えたかもしれぬが、判者が碧梧桐《へきごとう》というのだから先ず空想を斥《しりぞ》
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