九月十四日の朝
病牀に於て
正岡子規
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)葭簀《よしず》が
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)看護|旁《かたがた》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから6字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)おい/\
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朝蚊帳の中で目が覺めた。尚半ば夢中であつたがおい/\といふて人を起した。次の間に寝て居る妹と、座敷に寐て居る虚子とは同時に返事をして起きて來た。虚子は看護の爲にゆふべ泊つて呉れたのである。雨戸を明ける。蚊帳をはづす。此際余は口の内に一種の不愉快を感ずると共に、喉が渇いて全く濕ひの無い事を感じたから、用意の爲に枕許の盆に載せてあつた甲州葡萄を十粒程食つた。何ともいへぬ旨さであつた。金莖の露一杯といふ心持がした。斯くてやう/\に眠りがはつきりと覺めたので、十分に體の不安と苦痛とを感じて來た。今人を呼び起したのも勿論それだけの用はあつたので、直ちにうちの者に不淨物を取除けさした。余は四五日前より容態が急に變つて、今迄も殆ど動
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