木の葉掃き出す廓哉
東野の紅葉ちりこむ藁火哉

【松山堀ノ内】
梟や聞耳立つる三千騎
鰒釣や沖はあやしき雪模樣
鷺谷に一本淋し枯尾花

【松山】
寒梅や的場あたりは田舍めく
枯れてから何千年ぞ扶桑木
吹き入れし石燈籠の落葉哉
逃げる氣もつかでとらるゝ海鼠哉
ほろ/\と朝霜もゆる落葉哉
いさり火の消えて音ありむら千鳥

【少年不及大年】
年九十河豚を知らずと申けり
引きあげて一村くもる鯨哉

【祝】
とし/\に根も枯れはてず寒の菊
わろひれす鷹のすわりし嵐哉
繪のやうな紅葉ちる也霜の上
白鷺の泥にふみこむもみち哉
もみち葉のちる時悲し鹿の聲
谷窪に落ち重なれるもみち哉
居風呂に紅葉はねこむ筧哉
はきよせた箒に殘るもみち哉
二三枚もみち汲み出す釣瓶哉
一つかみづゝ爐にくべるもみち哉
舟流すあとに押しよるもみち哉
石壇や一つ/\に散もみち

【日光】
神橋は人も通らす散紅葉
藁屋根にくさりついたる※[#「※」は「木へん+色」、第3水準1−85−64、171−8]哉
豆腐屋の豆腐の水にもみち哉
衣洗ふ脛にひつゝくもみち哉
裏表きらり/\とちる紅葉
梟や杉見あぐれば十日月



底本:「子規全集
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