初汐や御茶の水橋あたりまで
親が鳴き子猿が鳴いて秋の風
子をつれて犬の出あるく月夜哉
稻妻をふるひおとすや鳴子引
名月や雄浪雌波の打ちがひ
いなつまや簔蟲のなく闇の闇
松風をはなれて高し秋の月
名月や谷の底なる話し聲
名月も心盡しの雲間哉
名月や思ふところに捨小舟
名月に白砂玉とも見ゆるかな
玉になる石もあるらんけふの月
名月や大海原は塵もなし
干網の風なまくさし浦の月
夕月や何やら跳る海の面
名月の一夜に肥ゆる鱸哉
名月や芋ぬすませる罪深し
秋 動物
啼に出てよる/\やせる男鹿哉
鶺鴒や三千丈の瀧の水
落鮎にはねる力はなかりけり
月の鹿尾の上/\に鳴きにけり
籠の虫皆啼きたつる小雨哉
虫賣や北野の聲に嵯峨の聲
虫賣りにゆられて虫の啼きにけり
虫賣の月なき方へ歸りけり
馬糞にわりなき秋のこてふ哉
蜩や一日/\をなきへらす
蜩に一すぢ長き夕日かな
蜩の松は月夜となりにけり
蟷螂の斧ほの/\と三日の月
かまきりのゆら/\上る芒哉
秋風や蟷螂肥て蝶細し
蟷螂は叶はぬ戀の狂亂か
蟷螂の切籠にかゝる夕かな
蟷螂や西瓜の甲かゝんとす
稻妻やかまきり何をとらんとす
かまきりの引きゆがめたる庵哉
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