つるはせを哉
秋の蚊や疊にそふて低く飛ぶ
哀れにも來て秋の蚊の殺さるゝ
狼の聲も聞こゆる夜寒かな
不二こえたくたびれ※[#「※」は「白+はち」、第3水準1−14−51、13−11]や隅田の雁
夕榮や雁一つらの西の空
片端は山にかゝるや天の川

【いとけなき頃よりはぐゝまれし嫗のみまかり給ひしと聞くに力を失ひて】
添竹も折れて地に伏す瓜の花
聲立てぬ別れやあはれ暖鳥
一夜妻ならであはれや暖鳥
雪よりも時雨にもろし冬牡丹
白露のおきあまりてはこぼれけり

【根津のあとにて】
明家やところ/\に猫の戀
[#改頁]

寒山枯木 明治己丑廿二年

高砂の松の二タ子が門の松
我庭に一本さきしすみれ哉
山の花下より見れば花の山
鳥なくや獨りたゝすむ花の奧
つくねんと大佛たつや五月雨
五月雨の晴間や屋根を直す音
つきあたる※[#「※」は「しんにょう+占」、第4水準2−89−83、15−8]一いきに燕哉

【村園門巷多相似】
燕や間違へさうな家の向き
白砂のきら/\とする熱さ哉
蓮の葉にうまくのつたる蛙哉
屋根葺の草履であがる熱哉
燕の飛ぶや町家の藏がまへ
七夕に團扇をかさん殘暑哉
秋風はまだこえかねつ
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