しらず夕櫻
別莊の注進來たりはつ櫻
大かたの枯木の中や初櫻
夕くれを背戸へ見に行櫻哉
花さかり月に雨もつよもすから
夜櫻の中に火ともす小家哉
夜櫻や露ちりかゝる辻行燈
小娘のからかささすやちる櫻
山鳥の木玉すさまし花の奧
白桃の櫻にまじる青さ哉
土器に花のひツつく神酒《ヲミキ》哉
籠一ツ花を押きる夜明哉
わびしらに櫻ちるなり緋の袴
競吟 さゝ波のなりにちゝまる和布哉[#「競吟」は上部に出ている]
せり吟 藤の芽は花さきさうになかりけり[#「せり吟」は上部に出ている]
ほうけたるつくし陽炎になりもせん
せり吟 鍋墨を靜かになてる柳かな[#「せり吟」は上部に出ている]
 〃 万歳の鼓にひらく梅の花[#「〃」は上部に出ている]
山吹の中に 米つくよめ御かな
      顏出す臼のおと
[#「米つくよめ御かな顏出す臼のおと」は「山吹の中に」の下にポイントを下げて2行で]

木蓮花鐵燈籠の黒さかな
山櫻さく手際よりちる手際
花を見ぬ人の心そ恐ろしき
傾城の息酒くさし夕櫻
山吹や折/\はねる水の月
上ケ土のあひにわりなし蓮花草
苗代や籾をかぶつてなく蛙
苗代や月をおさえてなく蛙
妹が門つゝじをむし
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