秋風に目をさましけり合歡の花
いつしかに桑の葉黒し 秋の風初しくれ
[#「秋の風初しくれ」は「いつしかに桑の葉黒し」の下にポイントを下げて2行で]
朝霧の富士を尊とく見する哉
秋風や崩れたつたる雲のみね
【農科大學の別科へ入門して林學を修むる虚空子へ遣はす】
松苗に行末ちぎる月見哉
【破蕉先生のもとに伺候して席上】
宵月やふすまにならぶ影法師
【二夜つゞきて破蕉先生のもとをおとづれて俳話猶つきず】
よひ/\に月みちたらぬ思ひ哉
椽端や月に向いたる客あるじ
晴れ過ぎて月に哀はなかりけり
ありイ
秋風や都にすんでなく夜哉
[#「ありイ」は「夜哉」の右側に注記するような形で]
新田や雨はなけれと芋の露
芋の露硯の海に湛へけり
一しきり露はら/\の夕哉
吹きかへす萩の雨戸や露はら/\
稻妻の壁つき通す光りかな
稻妻は雫の落る其間かな
【長命寺】
皀莢《サイカチ》の風にからめく月夜哉
すゞみイ
いろ/\の灯ともす舟の月見哉
[#「すゞみイ」は「月見哉」の右側に注記するような形で]
萩薄思ひ/\の野分哉
原へ出て目もあけられぬ野分哉
あれ馬のたて髮長き野分哉
吹きとつて雨さへふらぬ野分哉
から笠につられてありく野分哉
捨舟はかたよる海の野わき哉
からぐろの葉うつりするや露の玉
露の玉小牛の角をはしりけり
ほろ/\と露の玉ちる夕哉
つぶ/\と丸む力や露の玉
稻妻の消て不知火かすか也
芋の露われて半分は落にけり
白露の上に濁るや天の河
星一ツ飛んで音あり露の原
夕月に露ふりかける尾花哉
草の露こぼれてへりもせざりけり
芋の葉に月のころがる夜露哉
火葬場の灰におきけり夜の露
名月や露こしらへる芋の上
露いくつ絲瓜の尻に出あひけり
萩の露疊の上にこぼしけり
夜の露もえて音あり大文字
花火やむあとは露けき夜也けり
よもすがら露ちる土の凹みけり
かな
[#「かな」は「けり」の左側に注記するような形で]
白露を見事にこぼす旭哉
稻妻に露のちる間もなかりけり
白露や蕣は世に長きもの
灯のちらり/\通るや露の中
白露のうつくし過ぎて散にけり
仲國がすそごの袴露重し
白露やよごれて古き角やぐら
闇の空露すみのぼる光り哉
風吹て京も露けき夜也けり
白露の中にうつくし乞食小屋
露夜毎殺生石をあらひけり
佛像の眼やいれん露の玉
宵闇や露に引きずる狐の尾
色※[#「※」は「二の字点」、第3水準1−2−22、112−9]もなくて夜露の白さ哉
夕露に灰のつめたき野茶屋哉
一作 掛茶屋の灰はつめたしきり/\す
時頼が露の袈裟ほす焚火哉
魂棚の飯に露おくゆふべ哉
すてられた扇も露の宿り哉
白露の中に泣きけり祗王祗女
猪や一ふりふるふ朝の露
月のさす帆裏に露の通りけり
大佛やかたつら※[#「※」は「「韓」のへん+「礼」のつくり」、113−3]く朝の露
ふじは雲露にあけ行く裾野哉
白露の中に重る小鹿哉
目にさわるものなし月の隅田河
名月やうしろむいたる石佛 我黒ノ句ニ 名月に後むいたるかゝし哉
[#「我黒ノ句ニ 名月に後むいたるかゝし哉」は「名月やうしろむいたる石佛」の下にポイントを下げて2行で]
白露の中に乞食の鼾かな
十六夜の闇をこじきの焚火哉
かさの露動けは月のこぼれけり
秋風やらんふの笠も破れたり
陣笠に鶴の紋ありけふの月
笠いきて地上をはしる野分哉
秋風や京の大路の朱傘
つる/\と笠をすへるや露の玉
朝霧や女と見えてたびの笠
【送錬卿赴兵庫〔二句〕】
聞きにゆけ須磨の隣の秋の風
秋の雲いよ/\高く登りけり
露に泣き給ふ姿や市女笠
虚無僧の深あみ笠や盆の月
秋の雨兩天傘をなぶりけり
傘の端に三日月かゝる晴間哉
番傘のほつきと折れし野分哉
月蝕や笠きて出たる白拍子
傘の端のほのかに白し雨の月
光起が百鬼夜行く野分哉
松を隅に一天晴れたりけふの月
【画賛】
蛇の舌まだ赤し秋の風
塔一ツ霧より上に晴れにけり
はせを泣き蘇鐵は怒る野分哉
【李白画賛】
養老の月を李白にのませはや
【画賛】
骸骨の浮み出るや水の月
秋の雲太平洋を走りけり
ある月夜路通惟然に語るらく
乞食に妻も子もありけふの月
稻妻や乞食に明日の糧もなし
稻妻に寐返りしたる乞食哉
缺椀を叩く乞食の月見哉
獨り行膝行車や初嵐
名月や生れ落ちての薦被り
【留別】
月見んとふじに近よる一日つゝ
【留別】
名月を山でやほめん野でや見ん
【復五洲生文書後】
筆の穗のさゝけ出したり秋の風
【大磯松林舘〔四句〕】
犬つれて松原ありく月見哉
大磯の町出はなれし月見哉
名月や何やらうたふ海士か家
名月や誰やらありく浪の際
明月のうしろに高し箱根山
明月や山かけのぼる白うさぎ
明月の中に何やら踊りけり
塩汲の道※[#「※」は「二の字点」、第
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