はじめたる句法にや候はん。
新古今に移りて二、三首を挙げんに
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なごの海の霞のまよりながむれば入日《いりひ》を洗ふ沖つ白波
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[#地から5字上げ](実定《さねさだ》)
この歌の如く客観的に景色を善く写したるものは、新古今以前にはあらざるべく、これらもこの集の特色として見るべき者に候。惜むらくは「霞のまより」といふ句が疵《きず》にて候。一面にたなびきたる霞に間といふも可笑《おか》しく、縦《よ》し間ありともそれはこの趣向に必要ならず候。入日も海も霞みながらに見ゆるこそ趣は候なれ。
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ほのぼのと有明の月の月影に紅葉吹きおろす山おろしの風
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[#地から5字上げ](信明《のぶあき》)
これも客観的の歌にて、けしきも淋《さび》しく艶《えん》なるに、語を畳みかけて調子取りたる処いとめづらかに覚え候。
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さびしさに堪へたる人のまたもあれな庵《いお》を並べん冬の山里
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[#地から5字上げ](西行《さいぎょう》)
西行の心はこの歌に現れをり候。「心な
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