つて専門の歌よみが不注意を責むる者に御座候。箇様に悪口をつき申さば生を弥次馬《やじうま》連と同様に見る人もあるべけれど、生の弥次馬連なるか否かは貴兄は御承知の事と存候。異論の人あらば何人《なんぴと》にても来訪あるやう貴兄より御伝へ被下《くだされ》たく、三日三夜なりともつづけさまに議論|可致《いたすべく》候。熱心の点においては決して普通の歌よみどもには負け不申候。情激し筆走り候まま失礼の語も多かるべく御海容可被下《ごかいようくださるべく》候。拝具。
[#地から2字上げ](明治三十一年二月十八日)
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    四《よ》たび歌よみに与ふる書


 拝啓。空論ばかりにては傍人に解しがたく、実例につきて評せよとの御言葉|御尤《ごもっとも》と存候。実例と申しても際限もなき事にて、いづれを取りて評すべきやらんと惑《まど》ひ候へども、なるべく名高き者より試み可申候。御思《おんおも》ひあたりの歌ども御知らせ被下《くだされ》たく候。さて人丸《ひとまろ》の歌にかありけん

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もののふの八十氏川《やそうじがわ》の網代木《あじろぎ》にいざよふ波のゆくへ知らずも
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