わが幼時の美感
正岡子規
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)乳呑子《ちのみご》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)夢|覚《さ》めたり
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「陷のつくり+炎」、第3水準1−87−64]
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極めて幼き時の美はただ色にありて形にあらず、まして位置、配合、技術などそのほかの高尚なる複雑なる美は固より解すべくもあらず。その色すらなべての者は感ぜず、アツプ(美麗)と嬉しがらるるは必ず赤き花やかなる色に限りたるが如し。乳呑子《ちのみご》のともし火を見て無邪気なる笑顔をつくりたる、四つ五つの子が隣の伯母さんに見せんとていと嬉しがる木履《ぽっくり》の鼻緒、唐縮緬《とうちりめん》の帯、いづれ赤ならざるはあらず。こころみにおもちや屋の前に立ちて赤のまじらぬ者は何ぞと見よ。白毛黒髪の馬のおもちやにさへ赤き台の車はつけてあるべし。
わが幼き時の美の感じは如何にやと思ひめぐらすに五、六歳以下の事は記憶に残るべき道理な
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