ホいしん》官に示した要点の覚書《おぼえがき》というのが、雄弁にこの犯罪の内容を物語っている。
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一、各事件を通じて、死が浴槽内に突発したること。
二、各事件を通じて、浴室の扉《ドア》に内部から鍵が掛けてなかったこと。
三、各事件を通じて、死者がその死の直前に被告に有利なる遺言書を作成していること。
四、事件の多くを通じて、死者がその死の直前に生命保険に加入させられていること。
五、各事件を通じて、動産の可能なるものは、あらかじめすべて現金に換《か》えられていること。
六、各事件を通じて、死者はその死の直前に医師を訪問せしめられていること。および、死と同時に必ずその医師が呼ばれて死亡証明を書いていること。
七、各事件を通じて、死者の実家ならびに親戚《しんせき》等に死後二十四時間内に通知が発せられていること。および、各事件を通じて、その筆跡が同一であり、鑑定人はそれを被告のものと鑑定せること。
八、各事件を通じて、屍《し》体発見の直前に、被告は、夕刊、食料品を購《か》うためちょっと外出していること。
九、各事件を通じて、被告は、家人があがって来て見
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