Cの警察へ送付した。それとほとんど同時刻に、クロスレイも二つの新聞をまとめて、彼は地方警察へではなく、直接注意を促《うなが》して|ロンドン警視庁《スカットランド・ヤアド》[#「警視庁」は底本では「警察庁」と誤植]へ送り付けた。ここに初めて、ロンドン警視庁[#「警視庁」は底本では「警察庁」と誤植]はびくっと耳を立てたのだ。
捜査主任として第一線に活動したのは、のちの警視総監、当時の警部アウサア・ネイル―― Mr. Arthur Neil ――だった。この捜査は、じつに長期に亘《わた》って人知れぬ努力を払わせられた記録的なものだという。それはちょうど長夜の闇黒《あんこく》に山道を辿《たど》り抜いて、やがて峠の上に出て東天の白むを見るような具合だった。一歩一歩足を運ぶごとく証拠をあげて、事実の上に事実を積み重ねていったのである。これからの「浴槽の花嫁」事件――すでにジャーナリズムが拾いあげて、いちはやく、“Brides of the Bath Mystery”という、探偵小説めいた名を冠《かん》してそろそろセンセイションになりかけていた――がその多くの共通点に関係なく、すべて独立の過失で、
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