説に従って話しを進めて行くと、ワラタ号に追い抜かれた二十七日の夜晩くからかけて、翌二十八日一ぱい、その、航海の歴史にないほどの猛烈な暴風雨に出っくわしたクラン・マッキンタイア号は、約二昼夜揉みに揉まれた末、予定が遅れて、やっとのことで飜弄されるように目的地のケエプ・タウン港へ送り込まれた。入港と同時に、規則に依り、途中、後から来たワラタ号に追い抜かれて信号を交し、同船――ワラタ号も、此のケエプ・タウン港に向っていることを聞き知ったが――と、クラン・マッキンタイア号から早速ケエプ・タウン海事局へ届け出る。それとともに、そのワラタ号と別れてから記録的な大暴風雨に襲われ、そのため遅着した事も併せて報告された。ワラタはまだケエプ・タウンに入港《はい》っていない。が、誰も未だ心配する者はなかった。クラン・マッキンタイア号の言うような、何んな大|荒海《しけ》があったにしたところで、その小さなぼろ船でさえ可うやら突破して来た位いだから、同船より遙かに大きく新しいワラタ号が、乗り切れない筈はない。皆そう考えて、ワラタ号は予定が遅れただけで今にも港外に姿を現すであろうと、待ち構えていた。きっと機関に何か
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