う、「神の御業」などという言葉まで出て来て、つまり一同は匙を投げて終った。B・A・L会社の支配人ランド氏は、最初からこの「神の御旨」を主張していたものだった。前に言った、濠洲からダアバンまでワラタ号で来て、危険を感じて下船したという人―― Mr. Claud Sawyer という弁護士だったが、その他、バアクレイカアル造船所技師ジェイムス・シャンク、姉妹船ジイロング号機関長メエスン、一等運転士オウエン、処女航海に乗ったエブスウオウスという新聞記者、ブラッグというシドニイの大学教授、これらの人々が喚問されて、ワラタに関する素人観を述ぶる。処女航海だけで下りたハアバアトというボウイなども現れたが、勿論何ら神秘を解く手懸りにはならない。一九一一年二月二十三日に此の査問会は閉じている。神の御業である以上、人間の知識で判定の下しようがないのに不思議はない。



底本:「世界怪奇実話2[#「2」はローマ数字、1−13−22]」桃源社
   1969(昭和44)年11月10日発行
入力:A子
校正:小林繁雄
2006年9月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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