らず、鋭利な刃物で掬《すく》いとるように陰部を切りとって、陰毛を載《の》せた一片の肉塊が、かたわらの壁の板に落ちていた。そればかりではない。切り開いた陰部から手を挿入《そうにゅう》して臓腑《ぞうふ》を引き出したものとみえて、まるで玩具《おもちゃ》箱をひっくりかえしたように、そこら一面、赤色と紫とその濃淡の諸器官がごっちゃ[#「ごっちゃ」に傍点]に転がっていた、がただ一つ、子宮が紛失していた。
当時、自他ともに「斬り裂《さ》くジャック」と呼んで変幻《へんげん》きわまりなく、全ロンドンを恐怖の底に突き落としていた謎の殺人鬼があった。これが彼の、またもう一つの挑戦的犯行であることは、だれの眼にも一瞥《いちべつ》してわかった。最近、つづけさまに三度、この近隣のイースト・エンドに、これと全然同型の惨殺事件があったあとである。被害者は常に街上の売笑婦、現場はいつも戸外、ちょっとした横町のくらやみか、またはこのハンベリイ[#「ハンベリイ」は底本では「ハンベイリ」と誤植]街のような中庭《コウト》で、夜中とはいえ、往来を通る人の靴音も聞えれば、比較的人眼にもかかりやすい場所で平然と行なわれる。致命傷は
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