研究したら、かならず犯人は捕まっていたといわれている。その出しゃばり巡査はおそらく罰俸《ばっぽう》でも食って郡部へまわされでもしたことだろうが、いうところによると、この楽書《らくがき》の書体は、これより以前、二回にわたってセントラル・ニュース社に郵送された、一通の手紙と一葉の葉書の文字に酷似していた。否、紛《まぎ》れもなく同一のものであるとのことである。
その、新聞社に宛《あ》てた手紙と葉書は、真偽《しんぎ》両説、当時大問題を醸《かも》したもので、葉書のほうは、明らかに人血をもって認《したた》め、しかも、血の指紋がべたべた[#「べたべた」に傍点]押してあった。両方とも「親愛なる親方《ボス》よ」というアメリカふうの俗語を冒頭に、威嚇《いかく》的言辞を用いて新しい犯行を揚言《ようげん》し、手紙には「売春婦でない婦人にはなんらの危害を加えないから、その点は安心していてもらいたい」という意味を付加して、ともに「斬裂人《リッパア》ジャック」と、署名してあった。あとからも続けてきたことをみても、たぶん実際の犯人が執筆|投函《とうかん》したものかもしれない。が、どこの国にも度しがたい馬鹿がいる。こ
前へ
次へ
全59ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
牧 逸馬 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング