を引き裂き、その布切れで、肩、肘、手首、股のつけ根、膝、足首など、両の手足の関節を伝令二に緊縛してもらって、抜刀を口にくわえ、素早く砦を下りかける。
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伝令一 私が行って来ます。
札木合《ジャムカ》 うむ、勇ましいぞ。だがそち、身体のところどころを縛って行くのは、どうしたわけだ。
伝令一 はっ、血止めであります。こうして行けば、腕や足に矢が当り、または敵と引っ組んで斬られましたところで、血の出るのは、縛ってある布と布との間だけです。全身の血さえ流れ出ねば、どのような働きもできようと思いまして――。
札木合《ジャムカ》 うむ、行けっ!
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伝令一は、城寨を伝わって断崖の下へ下りて行く。後は、飛来する矢いっそう繁く、札木合《ジャムカ》、台察児《タイチャル》をはじめ一同無言のうちに弓を引き絞り、銃眼より射落して必死に戦う。避難民らは叫び声を揚げて逃げ惑う。しばらく物音のみ激しき防戦の場。
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衛兵 (今下りて行った伝令の裸体を担いで、堡
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