て退廷する時、初めて人々は、彼女の口から洩れ出る長い低い啜泣きの声を聞いた。
 アリゾナ州フロウレンスの州刑務所で、ウイニイ・ルウス・ジュッド――女囚第8811号――が、電気椅子に掛かったのは、今年の二月二十三日の星の寒い明方だった。アリゾナの沙漠に、粉雪の降っている朝だった。
「サミイが待っています。あたしはサミイの所へ行くんです」
 彼女は、そう繰り返しながら、長い石の廊下を死刑室へ進んで行った。暗い扉《ドア》の前に、警官に守られて、最後の別れを告げに立っていた良人のジュッド医師には、ルウスは一瞥も与えずに静かにドアの中へ導かれて行った。



底本:「世界怪奇実話2[#「2」はローマ数字、1−13−22]」桃源社
   1969(昭和44)年11月10日発行
入力:A子
校正:小林繁雄
2006年7月22日作成
青空文庫作成ファイル:
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