て行って彼女を抱きしめ、わざと人目を避けるために、角を曲って、第五街の入口からガレイジへ這入って来た。私は其処に立って、二人を待っていたのです」
ルウス・ジュッドは、顔は蒼ざめていたが、予期したほど疲労の色もなく、割りに冷静だった。この辺は通行人も少なく、ガレイジの使用人には何も話してないので、二人の紳士が女を待ち受けて、何か話しているとだけに見えたに相違ない。それでも、人目を避けて、車庫内の自動車の一つに乗り込んで、其処で話すことにした。
「警察へ知らせないで下さい! 出て行く時が来れば、私から出て行きますから――」
ルウスは繰り返しくりかえし、そう言った。
そこへ予ねて手配してあったガス・アルヴァレッツ葬儀会社の金ぴかの自動車が来た。判事とジュッド医師は、何も言わずに、いきなりルウスの腕を取って、その葬儀車へ乗り移ったのだ。
生きているうちに、柩に這入る――物好きな市民と、新聞社の自動車の追跡を避けて、無事に警察へ送り込むための、ラッセル判事の大苦心なのだった。
柩車へ乗りこむと、ルウスはすっかり崩折れて、
「手が痛いの、あなた。死にそうに痛いのよ」
と、良人に身を投げ
前へ
次へ
全68ページ中52ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
牧 逸馬 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング