の、S・P・ライン、アリゾナ州フォニックス市発、列車番号第三号の客貨物列車で到着したもので、丁度自分の監督で荷下ろしに当ったのだという。
「貨車乗務員が私に注意したのです」アンダスンの陳述だ。
「で私は、チッキ主任ジョウジ・ブルッカアに、特に其のトランクの保留を命じました。そして、誰か受取りに来たら、それとなく私へ知らせるようにと言って置きました。ところが、そうですね、丁度正午頃のことです」
 一人の青年を連れた若い女が、手荷物受取所へ現れて、チッキを提出し、そのトランク二個の交附方を求めたのだ。チッキの番号は、一つは「663165」、もう一つは、「406749」。ともに控え番号で「1」で前に言ったように、アリゾナ州フォニックス駅発。料金は、二個で四弗四十五仙とある。
「ブルッカアがそっと報らせて寄越しましたので、私は二人に会って、一寸変なところがあるから、直ぐ渡す訳には往かない。こっちへ来て見て呉れと言いますと、妙な顔をしてくっ付いて来るんです。三十呎離れて、もう堪らない臭いがするんですからねえ。何うです、と私が女に言いますと、女はけろりとして、何もにおいなんかしないという。私は呆れ
前へ 次へ
全68ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧 逸馬 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング