んで、そいつを見て呉れと言うんだ」
全く、臭いトランクに相違ないので。
刑事フランク・ライアンとO・P・トレスは、其の足で、市役所の隣りの警察を飛び出して、大至急S・P―― Southern Pacific 南太平洋鉄道会社――の駅へ駈けつける。この間、約五分。
会社の探査員、C・D・ヴァン・ドュ・マアクが、ちゃんと待ち構えている。ところで、其の変なトランクというのは、狩猟の獲物の鹿でも這入って居るのじゃないかと言うはなし――丁度狩りの期節《シイズン》でもあった。
「然し、色んな事情から見て、何うも可怪しいと思われる節があるのです。で、そちらへお願いした方がと、お呼びしたわけですが」
トレスが事務的に、
「品物は何処にあるんだね?」
「貨物室に置いてあるんですが、その中の一つは、あんまり猛烈な悪臭がするんで、今日一日、プラットフォウムに投げ出してありました。アンダスンという係を呼びます。委《くわ》しい事はこの男からお聴き取り下さい」[#「下さい」」は底本では「下さい。」]
この、着荷係A・V・アンダスンの話しに依ると、問題の二個のトランクというのは、其の朝、午前七時四十五分着
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