四月頃のことで、二人は、フォニックス市北二丁目の小さなバンガロウにいました。ちょっとアパアトメントのようになっている建物で、二家族住めるように出来ているのです。サミイの肺はまだほんとでなく、時どき悲観的な口調を洩らすというので、ルロイ夫人もルウスも非常に心配して、医者の私に慰めて、力づけて呉れるようにと、始終頼んだものでした。それから一と月程して、その家のほかの部屋にいた、もう一組の家族が何処かへ移ったので、ルウスがあまり熱心に言うものですから、私達夫婦は、其処へ移ったのでした。で、四人一軒の家に住むことになったわけで、自然、朝夕よく顔が合いましたが、ルウスはほんとにこの二人の女に夢中で、あんな好い人達はないなどと、始終口癖のように言っていました」
 このジュッド医師は、ずっと会社の嘱託医を専門にして来た関係上、関係している保険会社の依頼などで、よく長い間、家を明けて、他の地方へ出張しなければならないことがあった。丁度その頃、アリゾナ州ビスビイ町に新しい鉱山事業が起って、その従業員の身体検査やなどを依頼されたために、ジュッド氏はまた長期に亙って、家を留守にしなければならなくなった。それ
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