真夜中のことで、ぐっすり眠っていた青年を叩き起して訊いてみると、それがまたその車を売り払った後だというので、
「二、三週間前に、バアトン・マッキンネルっていう若い男へ譲ってやりました。そいつの住所ですか。ビヴァリイ谷《グレン》の二一一一番地だったと思いますが――」
 で、その足でビヴァリイ谷の家へ出掛けてみると、つい数刻前まで人の居たらしい気配が残っていて、台所の卓子《テエブル》の上にサンドウィッチと、レモン・パイの半分這入った紙袋などが置いてある。急の客のために慌しく食事を出す必要があって、こんな物を買って来たらしく思われるのだ。ドュヴァル巡査という人が、見張りに、その留守の家に残されることになる。誰でもやって来た者は、直ぐ捕まえるようにという命令で。
 十時頃、あの、フォニックス市警察から供給された材料で、刑事の一隊が、サンタ・モニカのジュッド医師のアドレスを検べに行くと、ここには思い掛けない非常な効果が一行を待っていた。ジュッド医師の実妹ケリイ・ジュッドというのが玄関に現れて、何ら隠すところなく兄のジュッド医師と、その義弟――ルウス・ジュッド夫人の実弟――バアトン・マッキンネル青
前へ 次へ
全68ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧 逸馬 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング