の者の話しでは、ルロイ夫人もサミュエルスン嬢も、去る十月十六日金曜日の夕方から、少しも影を見せないということ。
「其の地でチッキを提《さし》出した婦人の人相に当て填まるものは」フォニックスの係員は続けて、
「当署の調査に依れば、ルウス・ジュッド夫人ではないかと思われる。ルウス・ジュッド。Mrs. Ruth Judd そうです。J・U・D・D――ちょっと変った綴りです。この女は、お話にある通り、年齢約二十六、七歳、金髪で相当の美人です。いや、非常に美人だと言ってもいいでしょう。良人というのは、ウイリアム・C・ジュッドという医者で、目下御地羅府か、さもなければ加州のサンタ・モニカに出張している筈です。時どきジュッド夫人は、サンタ・モニカ町十七丁目八二三番地のアドレスで、良人と文通していることも判明しました。何うも疑問の女は、このジュッド夫人に相違ない。尚、夫人は、土曜日の晩当地発S・P第三号列車で、ロスアンゼルスへ向け、出発しています。家主の親爺が夫人に頼まれて、大きなトランクと少し小さなのと二つ、停車場まで運んだとも証言している。もう、断然間違いありません」
「O・K――それでは、相互に
前へ 次へ
全68ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧 逸馬 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング