い野獣のような、すばらしい美丈夫の巷《ちまた》の無頼漢《ぶらいかん》「チャア公|兄哥《あにい》」に成長していることであろう。日本流に数えても、四、五歳といえば、まだほとんどなんらの意識と印象を帯びないころである。自分を中心に渦巻いたあんな大騒動の片鱗《へんりん》をも記憶していないだろうし、生家のことなぞ夢にも知るまい。もちろん、名は変わっている。このチャアリイと、兄のウォルタアがいま対面したら?――あまりにくっきり[#「くっきり」に傍点]した人生の分岐《ぶんき》だ。双方に残酷だ。もうこうなったらは、会わないほうがいい。
 が、それにしてもチャアリイ、君はいったいどこにいる?



底本:「世界怪奇実話1[#「1」はローマ数字、1−13−21]」現代教養文庫、社会思想社
   1975(昭和50)年6月15日初版第1刷発行
※「カ月」と「ヵ月」の混在は、底本通りです。
入力:華猫
校正:A子
2006年7月22日作成
青空文庫作成ファイル:
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