日本では昔から男でも女でも、黒子は人物のイダンチテー即ち人違《ひとちがひ》でないことを証拠立てる役にしか立たなかつたやうである。傾城阿波の鳴門、巡礼歌の段にお弓が「とは疑もない我娘と、見れば見るほど稚がほ、見覚のあるひたひのほくろ[#「ひたひのほくろ」に白丸傍点]」や近江源氏先陣館、盛綱陣屋の段に、佐々木四郎左衛門高綱の子の小三郎『眉に一つの黒子迄[#「眉に一つの黒子迄」に白丸傍点]父親に此の似よふ』や、其他、一の谷嫩軍記で、義経にその正体を見抜かれた弥平兵衛宗清の弥陀六の眉間のほくろ[#「眉間のほくろ」に白丸傍点]等は随分名高いものであるが。いづれも黒子に就ての美醜を論外とした観方である。
底本:「日本の名随筆40 顔」作品社
1986(昭和61)年2月25日第1刷発行
1989(平成元)年10月31日第7刷発行
底本の親本:「遊心録(普及版)」第一書房
1931(昭和6)年2月
入力:渡邉 つよし
校正:門田裕志
2002年12月4日作成
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