人の尊敬に値するのである。碩学の人は求め得べし、しかれども兼ぬるに高節をもってする人は決して獲易《えやす》くはない。西に、正義を踏んで恐れず、学理のためには身首処を異にするを辞せざりしパピニアーヌスあり。東に、筆を燕《えん》王|成祖《せいそ》の前に抛《なげう》って、「死せば即ち死せんのみ、詔や草すべからず」と絶叫したる明朝の碩儒|方孝孺《ほうこうじゅ》がある。いささかもって吾人の意を強くするに足るのである。吾人はキュージャスとともに「法律の保護神」「万世の法律教師」なる讃辞をこの大法律家の前に捧げたいと思う。ギボンは「ローマ帝国衰亡史」に左の如く書いた。
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“That it was easier to commit than to justify a parricide” was the glorious reply of Papinian, who did not hesitate between the loss of life and that of honour. Such intrepid virtue, which had escaped pure a
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