、な事も出来たのである。故に学者たるものは、常にこの点に留意して自己の所説をもって容易に創見なりと断ずることを慎まねばならぬ。またこれと同時に、他人の学説に対しても、論理学の誤謬論法の範例として挙げらるる「前事は後事の因にして、後事は前事の果なり」(“Post hoc, propter hoc”)との断定を容易に下すことを避けねばならぬ。書を著わし、文を草して、しばしばこの種の誤謬に陥ることあるに鑑み、ここにこれを書して自ら戒めるのである。
大正五年五月五日[#20字下げて、地より3字上げで]陳 重 追 記
底本:「法窓夜話」岩波文庫、岩波書店
1980(昭和55)年1月16日第1刷発行
1999(平成11)年9月16日第14刷発行
底本の親本:「法窓夜話」有斐閣
1926(大正15)年1月25日発行第8刷
※文庫化当たって加えられた部分は入力しなかった。具体的には、小活字で()内に付された割注(生没年、語義等)、補注、漢文、欧文の訳文。但し、補注のうち、著者の事実誤認にかかる部分については、入力者注として入力した。
※底本中に頻出する圏点は、省略した。
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