ウ人の境が多いから、もしそのような場所で、運送契約を破って、女子供の足弱を置去りにすることがあったならば、これ実に生命身体に重大な危険を及ぼすものであって、民事責任をもってしては、制裁が十分でないのは勿論である。印度刑法がこれに臨むに刑事責任をもってしているのは、事情に適した立法といわねばならぬ。かくの如く、性質上は民事責任を生ずべき行為でも、場合によっては、刑事責任を生ぜしめなくては、法律の目的を貫き得ないことがある。立法家の須《すべか》らく留意すべき点ではないか。杓子《しゃくし》定規、琴柱《ことじ》に膠《にかわ》するの類は、手腕ある法律家の事ではない。
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九五 末期養子と由井正雪事件
徳川幕府時代には「末期養子」というものがあった。これは男子の無い者が急病等で危篤に陥ったとき、または重傷を蒙って死に瀕し、人事不省となったときなどに、親類朋友などが相|議《はか》って本人の名をもって養子をすることがあり、また時としては死後|喪《も》を秘し、本人の生存を装うて養子をすることもある。これらの場合を通常「末期養子」といい、また時としては「遽《にわか》養子」もしくは「急
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