ヘないのである。かく婆羅門僧の居催促は、偉大の効力があるところから、後には普通人が僧侶に依頼して催促をしてもらうことが始まり、遂に婆羅門僧は現今の執達吏のような事を常業とするに至った。インドが英領となり、裁判所も設けらるるに及んで、当局者は大いにこの蛮習の撲滅に苦心し、インド刑法にも禁止の明文を載せたが、多年の因襲は恐しいもので、十九世紀の半ば過ぎまでも、なお全くその迹を絶つには至らなかったということである。
 しかるにまた、ペルシアでは、現今でも断食居催促の法が行われているということである。しかもその方法が頗る面白い。債権者は、先ず債務者の門前数尺の地に麦を蒔き、その中央にドッカと座り込む。これ即ちこの麦が成熟して食えるようになるまでは、断食して居催促するぞという、大決心を示す意味である。
 以上の例は、いずれも法律の保護が不充分なる時代には、自己の権利を伸張せんがために、如何なる非常手段にまで出でねばならぬかということを示しているものである。吾人は実に平和穏便に自己の権利を主張し得られる聖代の民であることを感謝せざるを得ないではないか。
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 九二 地位と収入


 
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