条約


 現代の平和条約には、往々両国の国境に中立地帯を設けるという条款《じょうかん》があって、将来の衝突を防ぐ用をなしているが、古代の平和条約にも、同趣意にして形式を異にしているもののあることが、フィリモアの著書に見えている。即ちアテネ、ペルシャ間に結ばれ、デモステネスやプルタークによって「有名なる」(Famous)という形容詞を冠《かぶ》らしめられた重要な一平和条約において、アテネ人は、ペルシア人から、騎馬一日程以内のギリシア沿海へ立ち入らないという保証を取って、将来の衝突を避けようとしたとのことである。
[#改ページ]

 九○ 家界と領海(ランス・ショットとカノン・ショット)


 国法の原始状態は現今の国際法に似ている点があるようである。その主要な類似点を挙げてみれば、(一)立法者なくして慣例または約束に依って法律関係が定まること、(二)その法律関係は家もしくは氏族の如き団体相互間の関係なること、(三)その団体間に争議あるときは、自力制裁なる族戦(feud)に依ってこれを決するか、(四)または他の団体などの仲裁に依ってその解決を試みることなどである。しかしこれら根本論は暫く
前へ 次へ
全298ページ中242ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
穂積 陳重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング