が見えている。
 これは随分と変った解釈だ。継母が子供をいじめるのは素《もと》より罪深いことではあるが。
[#改ページ]

 八一 食人を無罪とす


 ベーコンは、難船の場合に、二人の遭難者が、たった一人だけを支えることの出来る板子に取縋《とりすが》って、その一人が他の一人を突き落したがために、一人は助かり、他の一人は溺死したときに、その生残った者は殺人罪に問わるべきものであるか否やについて、有名な問題を提供した。そしてベーコンは、かくの如き二人併存する能わざる場合には、自保の法則が行われるから、罪とならぬと言うておる。たしかグローチゥスは、仮に飢餓に差迫った一人があって、パン屋の店先に通りかかったとき、ふとした出来心から店頭のパンを攫《つか》み取り、これを食うて僅に餓死を免れたとしたところが、それは盗罪にはならぬと論じておったように記憶する。
 インドの古聖法は、餓死に瀕した場合には、たとい他人を殺してその肉を食うとも、それは自保のためである故、決して罪とはならぬとしてある。マヌー法典第十巻の中に、
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
第百四条 生命の危険に迫りたる者は、何
前へ 次へ
全298ページ中229ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
穂積 陳重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング