れに答えて、「人尽夫也、父一而已」といった。
[#ここで字下げ終わり]
という記事と、更にまた「論語」子路篇の、
[#ここから2字下げ、「レ一二」は返り点]
葉公語二孔子一曰、吾党有二直レ躬者一、其父攘レ羊而子証レ之、孔子曰、吾党直者異レ於レ是、父為レ子隠、子為レ父隠、直在二其中一矣。
[#ここで字下げ終わり]
という本文などを立論の根拠として、父の悪事を訴えた者は死罪に処すべきであるという断案を下した。
 しかるに、白石はこれに対して、長文の意見書を幕府に上《たてまつ》り、かくのごとき場合には、父の悪行を知ってこれを訴えてもなお罪がないものであるということを委細に論じた。その意見書は「決獄考」という書に載せているが、その論旨は概略次の如きものである。
[#ここから2字下げ]
君父夫の三綱は、人倫の常においては何れも尊きものであって、その間に差などはないものである。しかしながら、人倫の変に当り、その間に軽重を設けてその一に適従する必要を生じた場合には、一の標準を発見してこれに拠らなければならない。本件は父と夫との中果して何れが重親であって、随ってこれに従うべきものであるかという問題を決
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