ゥ分の夫は近頃病気に罹ったために、読書著述が出来なくなったから、一先ず書籍をゴルクム町へ送り返すことを乞うという趣を語って、その承諾を得、直ちに獄舎に帰り、予定通りに例の櫃の中にその夫を潜ませて、二人の監守兵をしてこれを運び出させようとした。しかるに、監守兵の一人はその櫃の平常よりも重いのを訝《いぶか》って、
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この中にはアルメニアン教徒が這入っているのではないか。
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と言った。これ実に発覚の危機、間髪を入れない刹那であった。この時に当り、もしマリアの機智胆略がなかったなら、文明世界が国際法の発達を観ることなお数十年の後になったかも知れぬ。マリア夫人は声色共に自若、微笑を含んで、
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さよう、アルメニアン教徒の書籍が這入っているのです。
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と答えた。それで兵卒らも終《つい》に蓋を開くことをせず、そのまま櫃を城門外に運び出した。
 忠僕某は、マリア夫人の兼ねての命令の通りに、城外で櫃を受け取り、直ちにこれを船に乗せて、運河の便を借りて、ゴルクム町に運送しようという考案で、船頭に対《むか》って充分の注
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