においてレートホイズ河から引いた水車溝の中に、偶然にも古文字の彫刻してある壁石が現われた。その石は大なる石壁の一部であるように見えたが、水車の持主のマノリス・エリヤキス(Manolis Eliakis)が、この由をフレデリコ・ハルブヘール博士(Dr. Frederico Halbherr)に話すと、博士は非常に悦んで、直ちにその壁の発掘およびその古文字の謄写に着手し、秋に至ってエルンスト・ファブリチウス博士(Dr. Ernst Fabricius)の協力を得て、竟《つい》にその石壁の全部の発掘を終り、また石壁に彫刻せられている法文の謄写を完了するに至った。しかのみならず、さきに発掘せられた数個の石片は、実にこの石壁の破片であって、トノンの発見した石片の文は、その法律の第五十八条乃至第六十条であり、アウッスーリエーの発見した二片は、第三十九条と第四十八条であるということが分ることとなった。しかしながら、この石壁中にはなお数個の石片の欠失しているものがある。それは、多分さきに水車溝を掘った時に取り除いて、その後に失われたものであろう。この欠損あるがために、法文の全部を回復することの出来ぬの
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