の在り方は大体あの程度のもので、文展だけが殊更それ以下というわけではない。日本の現在の政治、経済、文化のすべてを色と形で現わして見れば、要するに文展が出来上るわけである。その点、現実の文展はいま過渡期にあることも注意されなければならぬ。
 私は文展に限らず美術界のすべては、事変を契機とする民族力の発展昂揚を反映して、やがて大なる成果を挙げるであろうことを確信している。平和的所産である美術が事変によって蒙った打撃は深大であり、そこに一時の萎靡不振は已むを得なかったけれど、私はそれに対しいささかも悲観の必要はないと考えているのである。
 それよりも私はむしろ戦勝正大の気魄、国家興隆の大精神が美術の上にも当然顕示されて、従来よりも一層健康な大芸術の勃興が期待し得ることを断言して憚らないのである。かかる事実は古今東西の歴史に徴して既に余りにも歴然たることであり、更に日本民族の力を認識すればそれが余りにも当然なる結論であることを何人と雖も首肯せずにはおられないはずである。
 ただかかる機運は自ら醸成されるものであり、必ずしも人為的に導かれ得るものでないことを考える必要がある。たとえていえば、それ
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