物理学の要用
福沢諭吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)道《みち》なり

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)雲|凝《こ》りて雨となる

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(例)[#ここから2字下げ]
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 物理学とは、天然の原則にもとづき、物の性質を明らかにし、その働を察し、これを採ってもって人事の用に供するの学にして、おのずから他の学問に異なるところのものあり。たとえば今、経済学といい、商売学といい、等しく学の名あれども、今日の有様にては、経済商売の如き、未だまったく天然の原則によるものに非ず。いかんとなれば、経済商売に、自由の主義あり、保護の主義あり。そのもとづくところ、同じからずして、英国の学者が自由をもって理なりといえば、亜国の人は保護をもって道《みち》なりといい、これを聞けば双方ともに道理あるが如し。されば、経済商売の道理は、英亜両国においてその趣《おもむき》を異にするものといわざるをえず。
 物理はすなわち然らず。開闢《かいびゃく》の初より今日にいたるまで、世界古今、正《まさ》しく同一様にして変違あるこ
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