中津留別の書
福沢諭吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)中津留別《なかつりゅうべつ》の書
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)人の天然|持前《もちまえ》の性
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#天から2字下げ]
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中津留別《なかつりゅうべつ》の書
人は万物の霊なりとは、ただ耳目鼻口手足をそなえ言語・眠食するをいうにあらず。その実は、天道にしたがって徳を脩め、人の人たる知識・聞見を博くし、物に接し人に交わり、我が一身の独立をはかり、我が一家の活計を立ててこそ、はじめて万物の霊というべきなり。
古来、支那・日本人のあまり心付かざることなれども、人間の天性に自主・自由という道あり。ひと口に自由といえば我儘《わがまま》のように聞こゆれども、決して然《しか》らず。自由とは、他人の妨《さまたげ》をなさずして我が心のままに事を行うの義なり。父子・君臣・夫婦・朋友、たがいに相妨げずして、おのおのその持前《もちまえ》の心を自由自在に行われしめ、我が心をもって他人の身体を制せず、おのおのその一身の独立をなさしむ
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