駁はそう有力なものとも思われませんね。シムソンは土地不案内の者じゃないです。夏時分二度、タヴィストックに泊っていたことがあります。阿片はおそらくロンドンから持って来たものでしょう。合鍵は目的を達した上は、どこへかすててしまったものと考えられます。馬はどこか荒地《あれち》の中の凹みか、廃坑の中に殺されているかもしれません」
「襟飾《ネクタイ》のことはどう弁明していますか?」
「自分のものには相違ないけれど、遺失したのだといっています。しかし、シムソンが馬をつれ出したのだという新らしい事実が一つ発見されています」
ホームズは急に聞耳を立てた。「[#「「」は底本では一文後にある]兇行のあった月曜の夜。兇行の演じられた場所から一哩と離れないところでジプシーの一群がキャンプした跡を発見しました。月曜日に彼等は天幕を張って、火曜日に出発してしまったのです。そこで、ジプシーとシムソンとの間にある了解があったものとすると、シムソンはジプシーのいるところまで馬をつれて行く途中をストレーカに追いつかれた、で、馬はいまジプシー達の手にあるのだと考えられなくもありますまい?」
「たしかに有り得ないことではあ
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